1秒でも早い治療のために

脳卒中は“時間との勝負”

脳は一度傷を受けると回復する力が弱く、治療が遅れると症状が続く後遺症を残します。そのため、できるだけ早く治療をして、詰まった血管を再び流れるようにしたり、出血を食い止める治療が不可欠です。「時は脳なり、時間との勝負」といわれています。

発症から4.5時間以内ならrt-PA療法(血栓溶解療法)を、24時間以内なら血栓回収療法の適応となります。また、「脳血管造影開始までの時間が1時間遅れる毎に予後良好群が38%減少、また10分遅れる毎に6%ずつ減少する。」と言われるように、なるべく早期の治療開始が望ましいです。

 

当院では救急隊と協力して、病院到着までの時間短縮を図る取り組みや、病院到着から治療開始までの時間短縮を図るための取り組みを実践しています。

病院到着までの時間短縮の取り組み

当院では、脳卒中の発症から病院まで到着時刻の短縮を図るために、埼玉西部消防局の救急隊の皆様と定期的に「意見交換会」や「勉強会」を開催しています。これらの意見交換会を通じて、救急隊の現場滞在時間を短縮するために、当院は救急隊の皆様と下記4つの方針を取り決めました。

  • オーバートリアージ許容
  • 病院の回答迅速化
  • 必要最低限な情報共有
  • セカンドコール利用

また、この4つの方針に基づき、当院では下記のようなフローチャートを作成し、運用を行っています。その結果、救急隊の皆様のご協力のおかげもあり、脳卒中の発症現場から当院までの搬送時間の短縮を実現することが出来ました。

病院到着から治療開始までの時間短縮の取り組み

当院では病院到着から治療開始までの時間短縮を図るために、「シミュレーション」×「デブリーフィング(振り返り)」×「SSN対策会議」を定期的(2~3カ月に1回)に、かつ繰り返し実施しています。

シミュレーションについて

当院では「どのような条件下でも手技が活用されるように反復するトレーニング」、「臨床で遭遇する患者の状態や状況を取り上げたトレーニング」、「決められた手順に沿って医療提供が出来るかをトレーニング」の3つのトレーニングの為に、実際のSSNの現場を想定して、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師が参加するシミュレーションを開催しています。

このシミュレーションの際には、各工程の各項目が決められて手順通りに実践されているか、決められた基準以上で実践されているのかを評価するために「スコアリングシート」を用いて採点を行います。

デブリーフィング(振り返り)について

シミュレーション開催後は、シミュレーションで撮影した動画を閲覧し、省察的に振り返るためにデブリーフィングを開催します。その際、動画から更によくなるアイデアをもらうために、シミュレーションの実施者以外もデブリーフィングに参加してもらいます。
シミュレーションを開催するだけでなく、デブリーフィングを行うことにより「自らの言動や行動を客観的に振り返り、見つめ直す事」が可能となります。

SSN対策会議について

シミュレーションとデブリーフィングを経て洗い出された「問題点の抽出」と「修正案の提案」について協議するために、「SSN対策会議」を開催しています。このSSN対策会議では、SSNに関係するすべてのスタッフが参加します。また、この会議は課題解決についてSSN関連スタッフで討議する場でもあり、さらに、SSNにおけるシステム改定の諮問・決議する場でもあります。