膝関節の痛みについて

整形外科担当医

上坂真司(うえさか しんじ)

【診療日】  月曜日、金曜日
【専門】脊椎外傷、骨折、人工関節
【学位】医学博士(日本医科大学)
【 認定医・専門医 】 日本整形外科学会専門医
日本リウマチ学会リウマチ専門医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本整形外科学会認定リウマチ医
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
日本整形外科学会運動器リハビリテーション医
日本医師会健康スポーツドクター



膝関節の構造と関節炎

ひざの痛みの原因として、関節が炎症を起こしてしまう「関節炎」が挙げられます。

なぜ、炎症が起きてしまうのでしょう?

どうして痛くなるのでしょう?

まずは膝関節の仕組みや働きを知って、痛みの原因を理解しましょう。

動画で見る膝関節と関節炎

膝関節は、太ももの骨(大腿骨=だいたいこつ)、すねの骨(脛骨=けいこつ)、そしてひざの皿(膝蓋骨=しつがいこつ)からなる関節です。さらに、関節の周りに靱帯(じんたい)や筋肉があり、安定性を保つことができています。また、大腿骨と脛骨および膝蓋骨の表面は弾力性があって、滑らかな軟骨でおおわれています。

軟骨は関節を動かしたり、体重がかかった時の衝撃を緩和するクッションの役目をもっています。

軟骨は耐久性があるものですが、年齢を重ねるにつれてすり減っていきます。

関節を保護する軟骨がすり減ることにより、徐々に「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」を発症します。また、「関節リウマチ」や、以前にスポーツ中のケガなどによってひざの靭帯を傷めたり、骨折をしたことが原因で関節の変形が生じることがあります。そのため、体重がかかるたびに、軟骨の下の骨同士がこすれ合って、痛みを生じたり、こわばったりするようになります。

ひざの関節痛を引き起こす主な病気・ケガ

ひざの痛みの原因は、加齢に伴うものやケガによるものなどがあります。症状は、長期間かけて徐々に進行し、痛みのために歩行が困難になることもあります。

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

膝関節の軟骨が、加齢による変化(磨耗)やケガによる軟骨損傷によって、長期間かけて減っていくことが原因です。一度損傷した軟骨は、回復するのが難しいため、痛みが徐々に増加する傾向にあります。また、脚が「O脚」になるとひざの内側に負担がかかり、痛みが生じやすくなります。

 

50歳~60歳くらいから発症し始め、女性のほうが男性よりなりやすく、国内では、約1000万人もの方が変形性膝関節症に悩まされていると言われています。

関節リウマチ(かんせつりうまち)

発症原因が不明な病気で、関節が腫れ、痛みや「こわばり」を感じます。
初期段階では、手の指や手関節などの小さな関節に症状が現れ、次第にひざを含む全身の関節に広がり、慢性化します。膝関節の症状は、関節が腫れたり、水(関節液)がたまったり、関節の骨が破壊されることもあります。症状が進行すると、歩行できないほどの痛みを伴う場合があります。
女性の発症数は男性の約3倍と言われています。

主な症状の例

小さな関節から、全身の大きな関節へと進行
関節が腫れる
関節液がたまる
関節の骨が破壊されることもある

末期:極度の痛み「関節がかたくなる、歩きづらくなる」
関節の軟骨がほとんどなくなるため、関節のすき間がなくなります。
レントゲンでは、股関節の著しい変形がみられます。
筋力が落ち、おしりや太ももが細くなり、左右の脚の長さが違ってしまうこともあります。
この時期の治療としては、人工股関節置換術が行われますが、痛みや歩行の大幅な改善が期待できます。

この時期の主な症状

動かさなくても痛い
筋肉が落ち、脚が細くなる
左右の脚の長さが異なる

半月板損傷・靭帯損傷(はんげつばんそんしょう・じんたいそんしょう)

スポーツでのケガが原因となることが多いですが、高齢者の場合は自然に損傷することもあります。半月板は、膝関節でクッションのような役割を果たし、靭帯(じんたい)は関節の骨と骨をつなぎ安定させる役割があります。
半月板を損傷すると、痛みやひっかかりを感じたり、水(関節液)がたまることもあります。ひざの靱帯を損傷すると、ぐらつきを感じ、関節が不安定になるため、関節の軟骨に負担がかかり、将来的に変形性関節症になる危険性があります。

主な症状の例


<半月板損傷の場合>
ひざに痛みやひっかかりを感じる
関節液がたまることもある
<靭帯損傷の場合>
関節が不安定になる
変形性関節症になることもある

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、時間をかけて進行し、次第に症状が重くなります。一度傷ついた軟骨が回復することは難しいですが、早い段階から適切な処置を行うことで、進行を遅らせることが期待できます。

ここでは、各段階での主な症状を紹介します。

あなたの痛みはどの段階でしょうか?

初期:軽度の痛み「あれっ?ひざに違和感がある?」

関節の軟骨がこすれ合い、年齢的な要因もあり、軟骨の表面が傷ついてきます。
この時期の治療としては、湿布を貼ったり、痛み止めの内服や関節注射(ヒアルロン酸)を行います。運動療法や温熱療法も有効です。

この時期の主な症状
朝起きた時や動き始めにひざが「こわばる」
立ち上がった時や階段を下りる時に痛む
正座する時に痛む

進行期:持続的な痛み「痛みが引かない、腫れてきた」

関節の軟骨がすり減ったり、軟骨がはがれ落ちることで、骨に負担がかかり、関節が変形します。この時期の治療としては、初期の治療と同様に、痛み止めの内服や関節注射を行います。また、ひざの装具も有効です。

この時期の主な症状

関節のこわばりが強くなり、ひざが動きにくくなる
痛みが続き、ひざに腫れや熱感がある
ひざに水(関節液)がたまる
O脚が進行する

末期:極度の痛み「ひざが曲げにくい、歩くのがつらい」

関節の軟骨がなくなり、骨が露出するため、骨同士が直接こすれ合います。
関節が硬くなり、変形も進行します。
この時期の治療としては、痛みが強い場合は、人工膝関節置換術などの手術をします。

この時期の主な症状


痛みのために歩けなくなる
関節が硬くなり曲げられなくなる(拘縮:こうしゅく)
O脚が進行する

人工関節置換術の特徴

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、時間をかけて進行し、次第に症状が重くなります。
人工膝関節置換術は、近年、その技術も飛躍的に進歩し、日本国内で年間5万5千件以上の手術が行われる一般的な治療法になっています。
その一番の目的は、関節の痛みの除去です。さらに、ほとんど歩けなかった方が歩けるようになったり、外出困難だった方が旅行できるようになったりと、生活の質(QOL)の大きな改善が望めることもメリットです。

変形した関節も改善が期待できる

加齢とともに軟骨の損傷、変形が進み、さらに体重の負荷などの要因も加わって変形した膝関節を、人工膝関節によって本来の状態に戻すことを目的とした手術療法です。

全置換型と部分置換型

人工膝関節は、ひざの両側を置換する全置換型と、片側のみ置換する部分置換型があります。
どちらを選択するかは、関節炎(変形)の度合い・日頃の活動状況によって判断します。
部分置換型の場合、全置換型と比べて小さな人工関節を使うので、骨を削る量や手術による切開も小さく、より早期の回復や社会復帰が可能です。

技術開発による耐久性の向上

手術後、10年たった方のうち、97%(*)以上の人工関節は変わらず機能しています。
さらに、医療用、生体適合性の高いチタン、超高分子ポリエチレン素材の開発などにより幅広い年齢層に対応できるようになってきています。

※人工関節の耐用年数は個人の体重、年齢、活動レベルやその他の要因によって異なります。

部分置換術について

部分置換術は、痛みの原因となっている膝関節のすり減った片側だけを人工関節に置き換える手術です。
片側置換術や単顆置換術と呼ばれることもあります。

部分置換型 人工膝関節置換術

部分置換術のメリット

膝関節の問題が片側だけにある場合、部分置換術が適用できます。部分置換術の場合、全置換術と比べて、小さな人工関節を使うので、骨を削る量や、手術による切開が小さくて済むため、手術後の切開跡はそれほど目立ちません。

 

手術は2時間以内に完了するケースが多く、入院期間は2~3週間程度で(あくまでも目安で、個人差があります)、より早期の回復や社会復帰が期待できます。

部分置換型 人工膝関節の耐久性

部分置換型の人工膝関節で、手術後、15年たった方のうち、94%(*)以上はよく機能しています。
全置換型と比較しても、十分に良い成績が報告されています。

全置換術について

人工関節置換術は、関節の痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨を切除して、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術で、痛みの大きな改善が期待できます。

全置換型 人工膝関節置換術

全置換術のメリット

全置換術は、変形・変性した関節の表面にある関節軟骨や半月板を切除して置き換えるため、症状が進行してしまっている場合などにも行うことが可能です。
手術は2時間以内に完了するケースが多く、入院期間は3週間~1ヶ月程度です。(あくまでも目安で、個人差があります。)

診療のご案内

受付時間

午前の部 08:00〜12:00
午後の部 13:00〜16:30

診療開始時間
午前の部 09:00〜
午後の部 14:00〜

日曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前 上坂 上坂
午後 上坂 上坂