糖尿病内科ってどんな病気?

糖尿病内科担当医

佐瀬 利加(させ りか)

 

専門/内科・糖尿病内科

資格/日本内科学会認定内科医 日本糖尿病学会専門医・研修指導医 日本糖尿病協会指導医 日本医師会認定産業医 医学博士

所属学会/日本内科学会 日本糖尿病学会 埼玉県糖尿病協会理事

糖尿病の代表的な症状チェックしてみてください

下記の代表的な糖尿病に関連する項目に当てはまるものがあれば、それは糖尿病のサインかもしれません。

糖尿病の代表的な症状および関連因子

  • □ のどがすぐ乾き、水をよく飲む
  • □ おしっこの回数が多く、量が多い
  • □ 風邪症状や熱もないのに、倦怠感が続く
  • □ お腹がすいてよく食べるのに、体重が減っていく
  • □ 頻回に足がつったり、しびれたりする
  • □ 目がかすんだり、黒い点が見えたりする
  • □ ちょっとした傷が治りにくい
  • □ 男性の場合、性機能の問題が生じる(ED)
  • □ 会社の健康診断、特定健診等で指摘された
  • □ 血縁者に糖尿病の人がいる
  • □ ストレスや運動不足、過食傾向で、前年と比べて体重が5㎏以上増えた
  • □ 精神的に落ち込みやすく、うつ傾向である
  • □ 血縁者に膵臓がんになった人がいる

糖尿病ってどんな病気?

 

糖尿病人口は予備軍も含め、約1000万人を超えるといわれ、その対策は急務となっています。特徴は自覚症状に乏しく進行していても気づきにくい病気で、サイレントキラーとも言われています。

糖尿病の分類にはいくつかの種類があり、その種類によって糖尿病になる背景も違います。一般的に知られているものとして、「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。

 

1型糖尿病

「自己免疫性」と、原因がわかっていない「特発性」に分類されます。自己免疫性の1型糖尿病は、体の免疫システムが関連して、膵臓のβ細胞が何らかの原因で破壊されることにより発症します。

1型糖尿病の大部分は自己免疫性のものであり、発症には遺伝的要因とともに、さまざまな環境要因(内服薬・食事・腸内常在菌の構成・ミルクや母乳・日照時間など)が関係すると考えられています。子どもの糖尿病の多くは1型糖尿病ですが、最近では、あらゆる年齢層に起こる可能性があるとされています。突然発症する傾向があります。

 

2型糖尿病

私たちが生きていくための大切なエネルギー源として血液中にブドウ糖が存在します。このブドウ糖がなくては生きていけませんが、多すぎてもよくありません。糖尿病とは、この血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる病気です。この血液中のブドウ糖の割合を血糖値と呼びます。 なぜ、血糖値が高くなってしまうのでしょうか?

健康なひとは、食事をすると一時的に血液中のブドウ糖が増えますが、すい臓から出ている「インスリン」というホルモンによってブドウ糖を体内に取り込み、体内に蓄え、エネルギー源として使うことができる状態にしてくれます。このインスリンの働きによって、血糖値は一定の範囲内におさまっています。

ところが糖尿病患者さんは、このインスリンが少なくなったり、効きが悪くなったりして、ブドウ糖をうまく血液中から体内に取り込めなくなってしまいます。そして血糖値が高い状態(高血糖)が長く続くと、さまざまな病気(糖尿病合併症)を引き起こします。

2型糖尿病は、いくつかの遺伝因子と“食べすぎ”“運動不足”“ストレス”といった生活習慣が加わって、インスリンの働きを悪くしてしまい発症します。糖尿病全体の90%以上を占め、最も多いとされています。2型糖尿病の原因には、遺伝因子と環境因子があります。糖尿病発症と関係のある遺伝子によって、糖尿病を発症するリスクは高くなります。環境因子では、運動不足と、食生活の欧米化による脂質摂取量の増加が指摘されています。また、栄養バランスの偏った食事や不規則な食生活も関係しています。さらに、近年では、大麦や雑穀等の摂取量が激減したことによる食物繊維の摂取不足と、慢性的なマグネウムの摂取不足が、発症要因に関与していることが着目されています。

糖尿病かなと思ったら?

 

初期の糖尿病は自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断で「糖尿病」と言われても、ピンとこなくて放置するひともいるでしょう。しかし、自覚症状が出たときには、すでに合併症が進んでいることも少なくありません。放置すればするほど、治療が難しくなる病気です。合併症のため日常生活に支障が表れてくることが少なくありません。

 

 

糖尿病に関係する病気って?

 

血糖値が高いままの生活を続けると、血管がもろく、血管が壊れてしまういわゆる血管病になります。
そして、全身にネットワークを結んでいる血管と神経が、血糖値の高い状態が続くことで侵され、適正な栄養の供給が途絶えて全身の臓器にさまざまな障害が起こります。糖尿病による特有の合併症は3大合併症(神経障害・網膜症・腎症)といわれ、動脈硬化の進行に伴う心筋梗塞や脳梗塞、免疫力低下による感染症、インスリン作用不足が関係する骨粗鬆症、そしてガンの発症リスクを高めるといわれています。

 

糖尿病神経障害((3大合併症 神経疾患)

足先の神経細胞の代謝(成分バランス)が乱れ、また細い血管がダメージを受けて、神経に障害が起こります。足先のしびれや冷感、感覚の異常などがあらわれ、激しい痛みを伴うこともあります。糖尿病足病変と合わせて足の切断の原因となります。歌手の村田英雄さんが、糖尿病による足病変にも負けず、ご活躍されていました。

 

糖尿病網膜症 (3大合併症 眼疾患)

糖尿病網膜症は、眼の裏の網膜の中の細い血管がダメージを受けることで引き起こされます。網膜は、カメラに例えると光や色を感じるフィルムの役割をしており、その働きが低下して視力が落ちていきます。適切な治療を施さないと、失明に至ることもあります。

 

糖尿病腎症 (3大合併症 腎疾患)

糖尿病腎症は、腎臓の中の細い血管がダメージを受けることで引き起こされます。体に不要なものを血液の中から取り出して尿として外に捨てるという腎臓の働きが徐々に弱っていきます。進行すると人工透析が必要となります。
透析導入の原因は、糖尿病が進行し、腎臓の機能が低下したために透析 を開始する理由の第一位となっています。

 

動脈硬化性疾患(心血管疾患、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞など)

糖尿病は、全身の比較的太い血管に動脈硬化を引き起こします。動脈硬化とは血管が硬くなりしなやかさがなくなってしまった状態です。高血圧や脂質異常症、肥満、喫煙などと組み合わさって心筋梗塞や脳卒中などの原因となります。

 

糖尿病と認知症害(脳動脈硬化など)

近年、糖尿病と認知機能の関連性について研究が進んでいます。糖尿病患者さんには、脳血 管障害(脳出血や脳梗塞)を原因とする脳血管性 認知症の発症が多いと言われてきました。しかし 最近の研究では、糖尿病はアルツハイマー病の 発症にも関与することがわかってきました。

 

糖尿病と心血管リスク

糖尿病があると、糖尿病でない人と比較して心血管疾患の発症リスクが高くなり、また糖尿病の人が心血管疾患により死亡するリスクは、糖尿病でない人の1.8倍から2.5倍高まるといわれています。

 

歯周病

口の中の感染症に注意です。糖尿病の 患者さんには、虫歯や歯周病が非常に多いとい われています。特に、歯周病と糖尿病については、明らかな因果関係があります。 「歯周病があると、糖尿病が悪化する。歯周病 を治療すると糖尿病がよくなる。」これが、今、 最も注目されている糖尿病と歯周病の関係です。糖尿病では歯周病になりやすく、そして悪化しやすくなります。また、歯周病が重症であるほど血糖コントロールが悪くなることも分かっています。
歯周病は歯肉の腫れや出血、口臭などの原因となり、歯が抜けてしまうこともあります。

 

糖尿病はがんになりやすい?

今や日本人の2人に1人はがんを発症していると言われています。2013年5月に、日本糖尿病学会と日本癌学会から糖尿病とがんに関する委員会報告が発表されました。日本人約33万人の疫学データから、糖尿病(主に2型糖尿病)は肝臓がん、すい臓がん、大腸がん、全がんのリスク増加と関連していたことがわかりました。
しかし、糖尿病だから必ずがんになる、というわけではなく、その背景には食生活や生活環境などのさまざまな要因があると考えられます。食事、運動、体重コントロール、禁煙、節酒などの生活習慣の改善は、血糖コントロールのみならず、がんの予防につながる可能性のあることも指摘されています。
いたずらに恐れるのではなく、定期的にがん検診も受けながら、糖尿病本来の治療を行いましょう。良好な血糖コントロールを目指していくことががんの予防にも大切になります。

 

感染症

血糖値が慢性的に高い状態が続くと、免疫力が低下し、感染症を起こしやすくなります。風邪を引いたらなかなか治らない、膀胱炎症状を繰り返す、傷の治りが悪いなどありますが、近年一番恐れるべき感染症は新型コロナウィルス感染症です。糖尿病の人がかかりやすいのではなく、一旦かかったら重症化のリスクが高い、と言われています。ですが、いずれも良好な血糖コントロールを保てば糖尿病ではない人とリスクは同程度です。

治療と診断はどうしたらいいの?

 

糖尿病は、自覚症状がなく進行する病気です。そのため、『糖尿病を見つけるための検査』や『糖尿病と診断された後も、定期的に状態を把握するための検査』はとても大切になります。遺伝的因子・環境因子・自覚症状・合併症を調べます。

主な検査は?

 

血糖値の検査

血糖値は、生活の様々なことに影響され常に上がったり下がったりと変動しています。よって、血糖測定器で出る血糖値の結果はその瞬間の値を示しています。
そのため、測定した時の状態によって「空腹時血糖値」「食後血糖値」「随時血糖値」など、名前が変わります。

 

HbA1c検査(ヘモグロビン エーワンシー)

HbA1cは血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」とブドウ糖が結合した物質で、過去1,2カ月の血糖コントロールの状態がわかります。長期間の血糖コントロール状態がわかることで、糖尿病治療の貴重な情報源になります。

 

尿の検査

尿中微量アルブミン検査は、尿検査で実施され、腎臓の血管がダメージを受けることで尿の中に出てくるアルブミンというタンパクの量を測定します。健康診断などで行われる尿検査よりも、糖尿病腎症のステージがより早い段階で見つけ出すことができます。

その他、胸部エックス線検査・心電図検査・脳MRI検査・骨密度検査・血管年齢検査・心臓のエコー・腹部エコー等(当院で検査できます) 。骨粗鬆症に関しては、整形外科。神経障害による胃腸症状や慢性機能障害に関しては、消化器内科、泌尿器科と、当院内にてご案内させていただけます。

 

認知機能や脳梗塞に関しては、脳神経内科。心筋梗塞等の心臓疾患は、心臓内科。糖尿病網膜症・歯周病など検査、治療が必要な場合は眼科、歯科等各医療機関と連携し同時に治療を行います。

主な治療は?

 

血糖値を正常値により近づけて良好な血糖コントロールを維持することから始めます。糖尿病の治療目的は、高血糖が引き起こすいろいろな合併症を予防する。又は悪化を防止することです。

1)食事療法
2)運動療法
3)薬物療法

その中でも一番の基本は食事です。血糖を低下させるというサプリメントなどの広告に惑わされて、自己流のやり方で血糖コントロールが改善してこなかったり 、むしろ悪化してしまう場合もあります。正しい知識を持つことが重要であり、 当院では専任の管理栄養士がおりますので、ご希望に応じて個々人に合わせたアドバイスをさせていただきます。

低血糖について

 

薬物療法を行っている方にとって低血糖は効果と背中合わせといわれています。しかし、放置されれば意識障害、昏睡などに陥って命にもかかわってきます。インスリン製剤や経口血糖降下薬の用法・用量と、食事療法、運動療法のバランスがうまくとれていないときに起こります。
自動車を運転する方は、時に低血糖から自分だけでなく周囲を巻き込む大きな事故に発展することもあるので十分な注意が必要です。予防と対処方法を、習得していただきます。

 

糖尿病についてのまとめ

 

糖尿病は、無自覚無症状で進行し、いろいろな合併症と心筋梗塞・がん等のリスクを高めます。また一度進行してしまうと、なかなか元の状態に戻すのが困難です。そして病気が進行すると、日常生活が制限され、生活が困難になる場面が多くなり、患者家族様等の支援が必要となります。

 

食事療法・運動療法・薬物療法を含めた総合的な治療により糖尿病が十分にコントロールできていれば合併症の発症リスクは低くなります。糖尿病は生涯つきあっていく疾患です。長年にわたって糖尿病と経済的、心理面をコントロールするには、患者様、ご家族様には大きな負担となります。その負担を少しでも、軽減できるようにスタッフ一同、技術と知識の研鑽に日々努力し、患者様、ご家族様のお役に立てればと考えています。

 

糖尿病が気になる方、心配な方。健康診断、特定健診等で糖尿病を指摘され受診を勧められた方。以前治療していたが、数値が良くなったので通院をやめてしまった。途中で診療に通院しなくなってしまった等。

お気軽に、相談してください。

糖尿病内科  佐瀬利加

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